キングコング西野氏『えんとつ町のプペル』にみる無料(フリー)の価値とは?

正直言ってもともとあまり興味なかったんだけど、すごい話題になってたのでちょっと見てみるか!と、読んでみたらめちゃくちゃ感動しちゃいました。。


今回はいま話題のこちらの絵本と、その「無料公開」というやり方について考えてみました。

大ヒット中の絵本『えんとつ町のプペル』を全ページ無料公開します(キンコン西野)



『えんとつ町のプペル』とは?


お金の奴隷解放宣言。 : キングコング 西野 公式ブログ
芸人コンビ『キングコング』として活躍中の西野亮廣(にしのあきひろ)さんが、クラウドファンディングというインターネットで資金調達をする手法で立ち上げた絵本プロジェクトの作品。

この「プペル」という名前のモデルは、フランス国会議員のプペルさんという方で”ゴミ箱の設置”を義務付けた人物なんだとか。

ってアメトークで言ってました。たしか。
フランスってイメージ良いけど、目線から下のゴミがポイ捨て散らかり放題ですごい汚いってよく聞きますもんね。

作品のテーマのひとつでもある「ゴミ」から、この方をモデルにされているのでしょう。
ネーミングにもヒネリが効いていて、タイトルの時点ですでにおもしろそう。

なぜ今話題になっているのか?

もともと1冊2,000円で全国の書店やAmazonなどの通販にて販売されていた絵本なのですが、つい先日この絵本プロジェクトを立ち上げた西野さんが「『えんとつ町のプペル』を無料で読めるようにする!」と宣言・実行したことがきっかけでかなり賛否両論が巻き起りました。

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こんなステキな絵本が無料で読めてうれしい!

という肯定的な意見もあれば

もともと有料だった作品をいきなり無料にするなんて、他の作品の価値をも下げかねない!

というような否定的な意見も相次ぎ、炎上するカタチで話題となったのです。
(もともとしょっちゅう炎上している人ですが。。笑)

「無料公開」のなにが悪いのか?

なぜ無料にしたのか、という理由についてはご本人のブログにこうあります。

「読みたくてもおこづかいの足りない子供たちでも読める絵本にしたい」
「お金がないから見れない作品にしたくない」

一見すごく良いこと言ってるっぽい。
けど、これに対してものすごい批判も殺到している様子。

それじゃ、いったい無料公開のなにが悪いんでしょうか?

それは2,000円で売っていたものを0円にする、値段的価値をゼロにすること。


これによって相対的に他の作品の値段的価値も下げてしまいかねないからです。

他の絵本作家へ「西野さんの絵本は無料なのに、あなたの絵本はなぜ無料じゃないの?」という声が寄せられる可能性もあるということ。

うーん、たしかに中にはそういうこと言い出す人もいるかもしれないけど。。笑

無料と有料の好きな方を選べてもお金を払う人はいる

有料と無料のふたつの選択肢があるのに有料を選ぶケースってじつは世の中に他にもたくさんあります。

テレビ

テレビ本体さえ持っていればケーブルをつないでいつでも無料で見ることができます。
でも、有料のケーブルテレビ放送やHuluのような動画配信サービスにお金を払う人はたくさんいますよね。

スマホアプリ

アプリ自体は無料で全機能使えるのに広告を外すためにお金を払ったり、ゲームは全部無料で遊べるのにガチャ回すために課金したりとか、無料の選択肢があるのに有料を選ぶ人はたくさんいます。

YouTube

YouTubeで無料で聴けるアーティストの曲をCDで買ったり、無料で観れる映像をDVDで買ったりすることだってありますよね。
むしろYouTubeサーフィンをして初めて知ったアーティストの曲をもっと聴きたいから音源を買うことだって、音楽ファンなら誰しも経験があるはずです。


つまり僕たちはすでに、日々あたりまえのように無料の恩恵を受けているんですよね。



絵本が無料になったことはあまり前例がないかもしれないけど、無料でサービスを提供して有料のプランへの導線にする『フリーミアム』という手法自体は今に始まった事ではないので、この絵本や西野さんのことだけ批判するのはなんか筋が違うように思います。

無料(フリー)が生みだす新しい価値

 

「無料にできるもの」の多くはデータにすることができるもので、おもに絵や文章、音楽、映像、アプリケーションなど。この無料(フリー)の文化は特にインターネットが登場してから顕著になりました。

無料で公開するとお金が稼げないかというと、実はそうとも言えないのが今の時代。

だって今ぼくたちがしょっちゅう使ってるGoogle検索やYouTubeはすべて無料なのに、そのGoogleは世界有数の超巨大企業だから。

Googleは優れたサービスのほとんどを無料(フリー)で提供して世界中の人々の信用を得ることによって顧客(ユーザー)数を最大限に増やして、その膨大な数の顧客を相手に収益化(マネタイズ)をしているからなんですね。

これはキンコン西野さんがブログにも書いている

《お金稼ぎ》をしたい人は《お金稼ぎ》をすればいい。
ただ僕は、《信用稼ぎ》をしようと思います。

この考え方と、Googleの無料サービスは同じベクトルだと思います。

クオリティの高い作品を無料にするということはきっと作品そのものに自信があるからこそ。

気に入った人はブラウザ上で見るだけじゃなくフィジカル(現物)を有料で買うだろうし、無料にすることで僕みたいな「無料公開されて話題になってたから読んでみたけど、めっちゃいいじゃん!」って感じの人にまで、従来よりもさらに幅広い層にまで作品をリーチする(届ける)ことができますよね。

もっともっとたくさんの人に知ってもらって、より多くの信用を得て、さらにそこから先の新しいビジネスの可能性を模索するための一手としてすごく有効な方法だとあらためて思いました。

「無料からお金を生み出す」という発想

『フリー 〜(無料)からお金を生み出す新戦略』という本、知ってますか?

「Googleがなぜ無料サービスで成り立っているのか?」とか、「あの有名なTED(テッド・カンファレンス)は無料でYouTubeで見れるのになぜ高額な公演チケットがいつもソールドアウトするのか?」など、無料のビジネスにまつわるおもしろい内容がたくさん詰まった本。

ちょっと小難しい話も多いけど、すごくオススメです。

キンコン西野さんが『えんとつ町のプペル』を無料公開したのも、この『フリー』という本に書かれていることと同じで「お客さんたちに先にメリットを与えることでさらにファンを増やして、あとからそのファンたちに納得してもらった状態で快くお金を払ってもらう」ということを見越しているワケですよね。

批判の声もあるみたいだけど、僕はむしろめちゃくちゃ良心的な商売の仕方だと思いますよ。

無料公開について僕が思うこと


ぼくは『えんとつ町のプペル』のようなステキな絵本がタダで見れたり、好きなバンドのMVがYouTubeでタダで見れるのが当たり前の今の時代、すごく幸せだと思う。

なにが幸せって、無料ですばらしい作品を見れることもそうだけど、なにより『自分が欲しいものを探すためのコスト』がめちゃくちゃ減ったことが最高なんだよね。

「中身を知ってから気に入ったら買う」という選択肢


余談ですが、ぼくは小学生のころからメタルが好きなヤバいやつだったんだけど、当時はまわりにそんなの聴いてる人いなかったから誰とも話が合いませんでした。(まぁそんな小学生がいっぱいいたら世も末かなって思うけど)

月1,000円〜2,000円のおこづかいを少しづつ貯めてはMETALLICAやHELLOWEENのアルバムを買ってました。

YouTubeもiTunesがある今の世代にとってはイメージ沸かないかもしれないけど、そのころはCD屋さんの試聴機に入ってるアルバムしか試聴することができなかったんですよ。

そんななかでどうやって自分が欲しいCDを探してたかというと

ジャケ買い。これですよ。

ぼくが好きだったメタル(なかでもクサメタルと呼ばれるジャンル)の場合はね、ドラゴンと戦ってたり、大地に剣が突き刺さってるCDのジャケットとかだとだいたいカッコよかった。

これ、このダサいジャケット。
完全にビビッときますね。

まぁメタルに限らず、どのジャンルでもなんとなくその音楽性を象徴するようなアートワークがあるじゃないですか。
そのなかでも「これは当たりっぽいぞ! 」ってやつを探して買う。これがジャケ買い。

これがまた家に帰るまですごくワクワクして楽しい時間というか、ナイスな買い物の仕方なんだけど、これには非常に大きな欠点が…

それは「思ってたのと違うパターン」が多いこと。

曲聴けないからジャケで選んで買ってるだけなんで、当然聴いてみたら超ダサいこともけっこうあるんですよ。笑

決して多くないおこづかいをなんとか貯めてCDを買っていたので、ミスったときの痛手はハンパじゃないんですよね。。


でも、今だったらCD買う前にiTunesやYouTubeで探して聴けるし、ミュージックビデオも自由に見れる。ちゃんと事前に調べたり聴けるからジャケットだけで選んで失敗しなくて済む。

中身を知って、気にいったら買うという選択肢が増えてる。

これってめちゃくちゃすごいことじゃないですかね。

  • 西野さんが絵本を無料にしたきっかけでもある「2,000円の本は高くて買えない」と言った小学生 

  • 「今持ってるおこづかいで買えるのはアルバム1枚だけだからジャケ買いで失敗したくないなぁ」と思っていたメタル小学生(むかしのぼく)

このふたりの気持ちはだいたい一緒なんじゃないかと思います。(「絵本」と「メタル」ってのはかけ離れてるけど)

だから僕は今の時代は本当に豊かで素晴らしいと思ってるし、西野さんが絵本を無料にしたのもすごく良いことなんじゃないかって思います。

おわりに

お笑い以外の活動ばかりしている嫌われ者の芸人で、よく炎上しているというイメージが強い西野さんですが(笑)
実は言ってることはそんなに悪くないっていうか、実際すごく良いこと言ってると思います。

今までそんなに興味を持ってなかったんですけど、『えんとつ町のプペル』を見てからファンになりました。

チームで頑張って作ってる絵本のプロジェクトを芸人仲間たちにボコボコにされながらもカラダを張ってプロモーションしたり、なにやっても炎上するとわかってても自分のやりたいことを発信し続けてる西野さん。

カッコイイです。僕は好きです。

嫌いな人も多いのかもしれませんが。

少なくとも『えんとつ町のプペル』はすごく良い絵本でしたよ。

「批判する人はいつもどんなものか確かめないで、お金も払わないで文句を言う」って誰かが言ってました。

まだ読んでない人はせっかくなのでこの機会にぜひ読んでみてはいかがでしょうか?

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